残念すぎる邦題に物申す!作品自体は傑作!『ドラゴン×マッハ!』

  • 2018.02.08 Thursday
  • 20:30

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原題 殺破狼2/SPL2:A Time For Consequences

製作 中国/香港(2015)

監督 ソイ・チェン

出演 トニー・ジャー、ウー・ジン、サイモン・ヤムetc

★★★★★

 

【あらすじ】

香港のチャン刑事(サイモン・ヤム)は、裏社会で展開する闇の臓器売買を暴くため、甥のチーキット(ウー・ジン)を潜入捜査官として裏組織に送り込んでいた。だがある任務中にチーキットの正体がばれてしまい、臓器売買の黒幕であるホン・マンコン(ルイス・クー)の指示により、タイの監獄へと送還される。実は臓器売買の中心地であるこの監獄で、チーキットは監獄長のコー(マックス・チャン)から非情な仕打ちを受け続ける。ここで看守として働くチャイ(トニー・ジャー)には白血病の娘であるサー(アンダー・クンティーラー・ヨードチャーン)がいた。正義感の強いチャイだったが、コーから娘の治療費を賄ってもらっているために、チーキットへの仕打ちを見て見ぬフリをしていた。チャン刑事がチーキットの居場所を探るために躍起になる一方、チャイはチーキットが娘を救う鍵となる人物であることを知り…。

 

まず言いたいのは、作品自体のの評価ではなく本作の日本における配給の仕方の悪さだ。本作の原題は『SPL2:A Time For Consequences』。分かる人には分かると思うが、本作はドニーさん主演の『SPL 狼よ静かに死ね』の続編にあたる作品なのだ。それが『ドラゴン×マッハ!』などと、配給会社のツインによってあまりにも陳腐で的外れな邦題になってしまった。ツインは昔のジャッキー作品をはじめとする数多くの香港映画を、低価格かつ高いクオリティでDVDリリースすることでファンから支持を得ているが、稀に配給する新作映画にトンデモ邦題をつけてしまうことも。ウー・ジントニー・ジャーのW主演ということで、ブルース・リーの時代から未だに続く「香港=ドラゴン」の概念と、日本で公開するトニー・ジャー作品タイトルの恒例となってしまった「マッハ」を安直に組み合わせたんだろう(以前、他の配給会社で『トムヤムクン2』『マッハ!無限大』という邦題になった珍事件もある)。

 

↗日本公開当時のポスター。見よこのやっつけ仕事加減と安っぽさ。各国での公開が2015年だったのに対し、日本公開はなんと2017年!2年間も待たされ、やっとのことで公表されたこのタイトルにはひどく落胆した。下に載せた日本版の予告編を見ても、作品の真のテーマ性が伝わってこず、単なるアクション映画のようにしか見えないのだ。なにが「ウー・ジン ドラゴンが蹴る!」だ。ちなみに俺は2016年に旅行で台湾を訪れた際、過去の留学で知り合った台湾人の友人らから本作のDVDをプレゼントされ、英語字幕で鑑賞済みだった。日本版のリリースを心待ちにしていたので、ダメージはでかかった。

 

さて、そんな感じで日本でのリリース事情について苦言はしたが、作品自体のクオリティはあまりにも高く、1つの映画として評価されるべき傑作だ。『SPL 狼よ静かに死ね』の続編に位置する作品だと前述したが、実際にはストーリーとしては前作とのつながりは無い。あくまでも前作の作風、意思を継承しているという意味での続編だ。前作ではドニーさんサモ・ハンの初共演が見所の1つだったが、本作に集結したキャスト陣も目を見張る豪華さ。役柄が違えど、前作からはウー・ジンサイモン・ヤムが再び出演。そしてウー・ジンとのW主演には、タイを飛び出して活躍するアクションスターのトニー・ジャーが抜擢された。『チャーリーズ・エンジェル』『HERO』など、ユエン・ウーピンのもとでスタントや武術指導としてキャリアを重ねてきた新鋭マックス・チャンが、最強冷酷な監獄長を演じる。さらに特別出演としてルイス・クーが、彼のキャリア史上最も不気味なインパクトを放つ闇のボスを怪演している。監督を務めたソイ・チェンは大の『SPL 狼よ静かに死ね』ファンであるらしく、随所に前作のオマージュシーンが散りばめられているのが分かる。

 

ジャーは撮影同時期に既に『ワイルド・スピード スカイミッション』でハリウッド進出を果たしており、本作が香港映画デビュー作となる。とにかく、ジャーのムエタイアクションと香港映画の相性の良さが際立つ!肘や膝を駆使する(膝でバスのフロントガラスに突っ込む!)必殺技のインパクトが凄すぎて、正直な話どうしてもウー・ジンのアクションが喰われている印象もある。でもウー・ジンも、以前に比べてかなり荒々しいアクションができるようになっていることが分かるのも事実。そこに新鋭マックス・チャンが加わることにより、新たな化学反応が起こった。『ヴィヴァルディ 夏』がバックに流れ、神格的なジャーウー・ジンVSマックス・チャンの迫力は、残念ながら文章で表現しきれない。断言できるのは、現時点でアクション映画史上最高の2対1の画になっているということ。まるでトニー・ジャーの攻略本を読んできたかのように、過去作でどんな敵も沈めてきたジャーの技をことごとく防ぐマックス・チャンの無敵っぷりには、深刻な絶望感が漂っている。他にも、刑務所内で巻き起こる大勢の囚人たちの乱闘が長回しで撮影されていたり、新たなアクションを切り開く意欲もひしひし伝わってくる。

 

しかし、本作をアクションだけで評価するのはあまりにももったいない。大切なことなのでもう1度言うが、本作は1つの映画として評価されるべきなのだ。高レベルなアクションと並行し、非情に濃く絡み合った運命のドラマが展開される。それぞれの俳優たちの演技も熱を帯びており、見応えも十分。中でもめまぐるしい進化を遂げたのはジャーだ。以前は仏像や象を奪われて怒る田舎の青年を演じていたジャーは、本作でキャリア初となる父親を演じている。白血病の娘を愛しながらも心配するジャーの姿は、『バトルヒート』に続き、俳優として確実に一皮向けている。今後の躍進に期待ができる結果となった。その娘を演じるアンダー・クンティーラー・ヨードチャーンも、大人顔負けの力強い演技を見せ付ける天才子役だ。落ち着いた紳士的ながらも、感情を表に出さずに凶暴性を秘めている獄長を演じるマックス・チャンは、まさに生涯のハマリ役だろう。その後ドニーさん『イップ・マン 継承』の敵役に抜擢され、『パシフィック・リム アップライジング』でハリウッドに進出したことも頷ける。

 

本作に登場する人物は、いずれも何かしらの問題を抱えた者ばかり。チャイは白血病の娘を救えずに苦しんでおり、チーキットは潜入中に薬物依存に陥ってる。悪役であるホン・マンコンも心臓に病気を抱え、監獄長のコーも過去に何かしらの苦しみを味わっているようだ。よく見れば、ホン・マンコンの側近であるナイフ使いも耳に補聴器をつけ、物語のキーパーソンとなるある人物も発達障害であり、手足がない人々が何気なくクローズアップされるシーンもある。これらが意味するものとは、劇中でチャイがサーに向ける「この世は奇跡でいっぱいなんだよ」という言葉にあると思う。このシーンの詳細は割愛するが、「この世に生きる人々は何かしらで苦しんでいるが、その中でも懸命に生きようとしている。決して諦めてはいけない」と、観ている側にも響きそうなメッセージを感じた。前作でサイモン・ヤムが演じた刑事が「何が間違いで何が正しいのか」と言っていたのに対し、本作で同じくサイモン演じるチャン刑事が「間違ったことは正しいときに起こっている」と発するのも興味深い。

 

本作の日本公開はわずか2劇場から開始され、その後全国に拡大ロードショーをし、結果的に半年近くも公開を続けた。つくづく邦題が残念すぎるよなー。

 

 

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